ボールが動き出した瞬間にホイッスルが鳴り、前半が終わる。
それぞれのベンチに下がっていく選手たち。男子のベンチに下がった雪兎は息をついて顔を上げる。雰囲気がいつものものに戻る。
ふと、周囲を見るとベンチスタートの塩岡と滝原がタオルを配っているが、マネージャーの小月と愛華の姿がない。
「あれ、小月は?」
「ドリンクねぇの?」
先輩たちも気づき始める。マネージャーの不在とドリンクがないことに困惑しているようだ。その困惑はベンチにいた2人も同様に感じている。
「小月さんが先に行って、白鳥も手伝いに行ってくれてから戻ってきてないんです」
「見に行くか」
「オレ行きます」
動き出そうとした戸木よりも先に雪兎は歩き出す。その足取りは迷いなく水道へ向かっている。
その背に、慌てて滝原がついて行った。

