「…」
「…すげぇ」
最早チームの境なく、グランドに立つ者だけでなく、グランドを見つめる者たちの注目を一身に受ける雪兎。
圧倒的な実力と、求心力。
誰もが持てるものではない。天才。神童。そんな言葉が似合う者だ。
シュートを決めたのにも関わらず、雪兎は喜ぶこともなく自分のポジションに戻っていく。
そんな雪兎に誰も声をかけられなかった…。
「ゆきとぉぉおおお!!!」
「…」
「っぎゃ!!?」
例外が1人。懲りずに雪兎に抱き着きに行った彰矢だが、先程と全く同じようにグランドに伸びた。雪兎は額に手を当ててため息をついている。
「だから抱き着いてくんな」
「避けていいから、転ばせないで……」
「お前が避けろ」
「無茶…な……」
冷え冷えとした雪兎の態度に彰矢は懲りた様子はない。

