澄みきった青空に、桃色の花が舞う。

街の空気はどの時期よりも、期待と緊張に溢れている。

桜並木をくぐる、真新しい制服に身を包んだ顔もまた、これから始まる高校生活への期待と緊張に溢れていた。

「え…おっと…」

「っきゃ!?」

「はぁ、はぁ、はぁ…」

そんな新入生たちをかわし、縫うように突き進む小柄な影。

紺色のブレザーにズボン。胸には真新しい赤色のネクタイをしている。

黒色の短い髪は跳ね、荒い息を繰り返しているのにも関わらず、その目はキラキラと輝き、不安など感じさせない。

肩にかけたスポーツバックをつかむ手に力がこもる。

やがて、たどり着いた学校の前で門もくぐらず足が止まる。

『月掛高等学校 入学式』

門に立て掛けられるように置かれた看板。それを見つめると、両手を握り軽くうつむいた。

「っ~しゃあ!!燃えてきた!!」

高らかに吠え、笑みを浮かべると再び走り出す。

周囲の視線を奪いながらも、それに気づかないまま駆け抜けるその姿は、まるで疾風のように。