ケーキ屋の彼


土曜日、櫻子と柑菜はホームパーティ用の料理を、レシピを見ながら作っている。


櫻子の立派な家の一角にある、広々としたキッチンは、2人が並んでもまだまだ余裕があった。


白が基調のキッチンは、清潔感が漂う。


キッチン用品は、まるで新品であるかのように綺麗なもので揃えられていた。


ドアの近くには、西音寺家のメイドが1人立っている。


キッチンの壁に掛けられた時計は、櫻子が出かける5分前を指していた。


「じゃあ、私は出かけるわ。真波さん、柑菜ちゃんのお手伝いよろしくね」


櫻子は、メイドに向かってそう言う。


その光景を見た柑菜は、櫻子とは住む世界が違うんだなと、しみじみと思った。


「承りました」


真波の洗練された声が、柑菜の耳に入る。


櫻子はエプロンを外し、「じゃあ行ってくるわ」と柑菜に告げ、キッチンを後にした。


柑菜は、その後ろ姿を見つめていた。