だって、いい人ってことは付き合うってことでしょう?


「そんな素敵な人は私と付き合わないから」

「あら?そういう素敵な人職場にいるの?」


目をキラキラと輝かせてお母さんが聞いてくるけど、今、だからそれはないって言ったばかりで。


「いやいや、だからそれとこれとは……」

「だって、素敵な人がいたらお仕事も楽しく出来るでしょう?」


あなたは望亜奈さんと同じ人種ですか?って突っ込みいれたくなったけど。


「私の直属の上司だよ。仕事の鬼なんだから」


だからありえないって。


「まぁオフィス恋愛とか素敵じゃない?ねぇお父さん?」


お母さん。今私が言った話、聞いてた?


「母さんとは職場結婚だったからなぁ」

「もう、あの頃の事思い出しちゃうわ」


ウフフって可愛い微笑を浮かべるお母さんはまさに恋する乙女で。

しかも、お父さんまで。
確かに結婚二十五年経っても二人すごく仲いいのはわかるけど、今それは全く関係ないわけで。

まぁいいや。私の恋愛話から外れてくれればそれでいいか。


「楽しみにしてるわね?」

「へ?何を?」

「その素敵な人との恋の話」


あぁ全然、全く私の恋愛話から反れてなんていなかったらしい。


素敵な人ねぇ……


主任のこと素敵って最初思ったのは事実だけど。もうちょっと親しみやすかったら違ったりしたのかも?

例えば、朔也さんみたいな?

あ、でも朔也さんと話す主任は普段と違ってたみたいだったけど?

あんな感じだったら……


主任と私なんてありえないのに。

今、あんな感じだったらって、そんなことありえないのに。

ハァ

お母さんが変な事言うから。変な妄想しちゃったんじゃない……。