「遅れて悪い」


上から聞こえたその声は――


とても会いたくて
せつない気持ちを教えてくれた
その人の声にとても似ていて。

その人を見るためには思いっきり振り返れば見れる。
だけどそうするのも躊躇われて。

きっとこの人がジュンさんなんだけど……


―――この声は。


でもまさか
そんなわけ

声の主が知りたい。

けど、
でも、

なんで?
どうして?

頭の中が混乱したまま振り向けずにいると、私の真後ろに立ったような?
その人は空いていた私の隣の座席に手を置いて話し始める。


「ビール一杯ぐらいの時間ある?」

「あるある。全然平気だよね?スーちゃん」

「あーたぶん。ラストオーダー言われてないから」


この香り。
この声。


そんなこと
そんなわけ
あるはずが


だって、ジュンさんって――――?


「モモ、」


頭上からそう言われてビクッとなる。



こんな風に
この声で呼ばれたら……

ガタっと音がしてその人が隣に座った様子が伝わった。


「モモ?どうした?」


どうしたも
こうしたも

そう言われてあわてて振り向いた私の目の前には、心配して覗きこんだジュンさんの顔。

ちょ、、、近いですって!!!!


いや、ジュンさんの顔っていうか。


「主任?!」


この声もこの香りも。
間違いなく主任で。


今私の隣に座っているのは、
会いたかったその人。


でもどうして?
ここにいるの?


「じゃ、ジュンちゃんも来たことだし、乾杯♪」

「「「かんぱーい」」」


乾杯どころか、
????
頭の中で?がいっぱい溢れてる。


なんで主任がここにいて
なんでジュンさんって呼ばれてて
どういうこと、なのか。