じっと見つめてくる二人の視線。
これは、ちゃんと答えるまでは逃れられそうにない。


「あーこの前ちょっとだけ飲みすぎたみたいで、潤兄の家で寝ちゃったんデス」


最後は小声。
だって、また子供みたいなことって思われるから。


「桃華ちゃんも自分の体調と相談しながら飲まないとダメだよ?」

「…はい」


全くです、朔也さん。
反省してます。


「ほーんと、練習だったらいつでも付き合うんだからね」

「ぇ…」


ちょっと。、それは……
いつでも飲みに行くわよっていう宣言ですか?望亜奈さん。


「アイツに知られたらオレがすごい怒られそうだ……」


ぽそって朔也さんは言ったけど、アイツって主任のことだよね?

主任を想像させるその言葉に、やっぱりここにいないんだって余計に感じてしまって。
胸がきゅーって痛んで、喉の奥が熱くなって、とっさに下を向く。

もう、涙なんて乾いたと思ったのに。
もうそんなもの残ってないと思ってたのに。
ダメだよ、ここで泣いちゃダメ。


「ちょっと、化粧室に…」


席が通路側でよかった。
下を向いたままそう言うと、立ちあがり化粧室に歩いていった。


「桃ちゃん?」


後ろから声を掛けられて、望亜奈さんが追いかけてきてくれたんだってわかった。
私の正面に座ってた望亜奈さんには私の赤い目が見えちゃってたのかもしれない。


「アハハ なんかすでに飲みすぎちゃったかなぁ?」

「桃ちゃん…。無理しなくていいのに」

「大丈夫ですよ?うん、大丈夫。」


自分で言い聞かせるようにそう言うと望亜奈さんに笑って見せた。