「あれだな。桃はもっとオレを頼ったらいいんだよ」

「…もう、十分に頼ってるよ」


従兄弟で小さい頃から仲良くしてるからといったって、これ以上は甘えるわけにはいかない。
でも今日だけ。ちょっとだけ……


「潤にぃ、私ね。振られちゃったんだ……」

「……そうか」

「振られちゃったって言うかね、告白さえ、させてもらえなかったの。笑っちゃう、よね」


ほんとはなんでどうしてって疑問ばかりで。
今だってその答えを探してる。


「もう一回、伝えればいいだろ?」

「……できないの。もうここにいないから」


いつまでもこのままここで立ち止まっていても、明るい未来なんてない。

頭では判ってる。
心が付いていかないだけ。


「大事なことはきちんと言わないと相手に伝わらないし、前にも進めない」


何かをかみ締めるようにそう言った潤兄の言葉は重く。
その言葉を言った後でビールをまた一気に飲み干した。


「桃はまだ、酒平気?」

「あ、うん。まだあるから大丈夫」


冷蔵庫に行き、ビールを取り出してその場でまたあけて飲む潤兄。
なんか無理やり、飲んでるように見えるけど……


「桃は今まで自分から好きになったこと、ないだろ?」

「へ?あー…うん、そうかも」


確かに告白された人と付き合ってきたから、後からだんだん好きになってた。


「甘いだけじゃなくて、切なくてどうしようもないところまできちゃったらさ、もう止められないんだよ。……その想いは」

「……うん。なんか今はわかる気がする」

「でも、その想いを伝えることで受け止めてもらえるかもしれないんだよ」

「その確率って限りなく低いと思う……」


態度でわかる。
告白さえさせてもらえなくて、しかも逆ギレってほんとにドンだけ子供よ、私って。
そんな私なんて受け止めてもらえるわけがない。