その後、潤兄からの連絡はなく、これはもう間違いなくここに向かっていると確信した。
潤兄が来るまで暇だし、そのまま梅酒をちびちびと飲み続ける。
なんかだんだんとフワフワしてくる感じ。


ピンポーン

潤兄がきたらしい。

カチャ


玄関のドアをあけた私を見るなり驚いた顔をする潤兄。


「桃。お前、熱でもあんの?」


私のおでこに手を当てて熱があるのか確かめる潤兄。


「熱なんて、ないよ」

「じゃあ、何で桃の顔そんなに赤いんだ?」

「……あー、」


つかつかと部屋の中に入った潤兄はテーブルの上に置いたままのその缶を見つけると、そのままくるっと振り返って少し怖い顔で「桃、一人で飲んでた?」と聞いてきた。


「……あー、うん。」


怒られるのかと思いきや、潤兄の口から出たのは「オレの分もある?」だった。

たしか望亜奈さんが置いてったビールがあるかも?
ずっと冷蔵庫に入ったままだったけど、期限を確認すれば平気だった。
潤兄はビールを受け取るとすぐに座ってそのままビールをあけた。

プシュ


「ほら、桃も座って」

「あ、うん」

「はい、乾杯」って言ってビールの缶を持ったまま私のお酒に当てて飲みだした。


「桃も一人で酒飲めるようになったのかー」


まだ小さな子供だって思ってるんだよね、きっと。


「ちょっと、なにそれ。いつまでも私だって子供じゃないんだしっ」

「ハハ 冗談だよ。でもそれなくなったらもう終わりな?」


なによ、潤兄。私だって飲めるのに。
主任も潤兄も、みんないつだって子ども扱い。


「なんで?!」

「桃、そんなに酒飲めないだろ?それに今日はまだ月曜だし」


諭すように優しく言う潤兄が急に大人に見えて。やっぱり子ども扱いしてるって悔しくなって。


「そんなの関係ないじゃん!私だって飲みたいときがあるの!」


ついつい強い調子で言ってしまった。
潤兄が心配して言ってくれてるっていうのはわかっているというのに。

いつもならそうだよねっていうところだけど、なんだって私はこんなにも反抗的になっちゃうんだろ。


「桃。なんか、あったのか?」

「……何も、ないってば」

「そうか……」


それから潤兄は黙って隣で缶ビールを飲み続け、私がやっと1本飲み終える頃にはとっくに終わってた。


「桃。今日は帰るけど、なんかあったら連絡しろよ?」

「……うん」


それだけ言うと、潤兄は帰っていった。
あれ?今日って何しに来たんだっけ。潤兄。