「そろそろ行きましょうか」
そうだった。
これで終わりじゃなかった。
ていうか、ここからが今日のメイン。
だって「初日の出」を見に来たのだから。
「はい」
車内も暖かくなって、飲み物を飲んだおかげで芯まで冷えていた体も暖まった。
私はもぞもぞとケープを脱ぎ、たたんで膝上に置く。
主任は車に乗るときにダウンを脱いで後部座席においていたけど、車内すごく寒かったのに。
まるで寒さなんて感じないみたいに、しゃきっとしてるんだよね、いつも。
寒がって丸まってる私とは大違い。
私がコタツで丸くなってるネコだったら、主任は、ユキヒョウとか?
そんな妄想をしていた私が慌ててシートベルトをすると、それを確認した主任はゆっくりと車を動かした。
「着くまでしばらくかかりますので、寝ていていいですから」
「え?そんな、寝ないですっ」
貴重なこの時間に寝るなんて、
だいたい隣で運転してくれてるのにそんなこと出来ない。
はずだった……のに
夜更かししてゲームしていても、二時過ぎには眠くなる私。
いつもそんな生活をしている私がこの時間帯に起きていられたのは外にいたから。
先ほどまでの人ごみで歩いていた疲れと、車内の暖かさでだんだんと……
ふわっとほのかに香った匂いになんだかとっても安心してさらに眠りを深くしていった。
寝返りをしようとして胸を締め付ける何かに違和感を感じた。
へ?ここは?
車の中?
まさかっ
私ったら
寝ちゃったとか
ありえないっ!!!

