彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)

やっと賽銭箱の前まで着いて、すっと離された主任の手。
その温もりがなくなったとたん寂しく感じられた。

……ただの迷子防止だっていうのに。

神様の前についたんだから、せっかくだからお願いしないとね。

私がお願いしたことは


『彼と少しでもお近づきになれますように』


そう、彼。

彼ってお願いしておけば、神様もちゃんと考えてくれるよね?

その彼が誰かって。



お参りを終えて、すぐに見つけたおみくじ。


「あ。」

「おみくじですか?」

「今年始めの運試し、主任も一緒に引きましょう!」

「いえ、私は…」

「せっかくきたんですから、ね?」


だって、一人だけおみくじ引くのって寂しい。
結果を見せ合ってこそのおみくじだもの。


ドキドキしながらおみくじの箱を振って番号の書かれた棒を巫女さんに見せると渡してくれたのは


「吉、ですか」


背の高い主任は私の頭の上からその紙を見ていった。

今年は主任が一緒だし、良いの引けると思ったのに……

で、主任は?


主任の手に持っているその紙を見ると、


「大吉っ!主任、すごいっ!」

「最近は結構入ってるみたいですよ?」


そうは言っても、私自身のものは最近見てない。
まぁ、大吉なんて私がほんとに引けるなんて思ってないけど。


主任は大吉かぁ……


私は吉なんてよりも気になったのは、


待ち人  遠い
縁談  時期を待て


遠いって何?
縁談もダメて。
いいとこなしじゃん


「吉なら昨年よりはいいですね」

「え?あ、はぁそうですね」


吉とか末小吉とかそういうのよりも
恋愛運とか結婚運とかそういうのが重要なんだけど。

だったら恋みくじを引けって言う突っ込みもありそうだけど、さすがにそれは主任と一緒じゃ引けないし。


しっかりとおみくじを結んで神社を後にする。

もちろん帰り道は迷子になったりしないから手は繋がれていない。

並んで歩いていると、主任が急にポケットから携帯を取り出した。


「……はい」

「無事に着いたのかよ」

「は?なんで?……別にいいだろ?」

「……ったよ、代わるから」


やり取りからして、たぶん朔也さん。
代わるって事は、私と?かな?


「朔也です。天ヶ瀬さんと代わるようにと」


やっぱり。
だってしゃべり方がかなり乱暴でこんな風に話す主任は朔也さんの前でしか見たことない。