彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)

お参りの列に並んでいる間に鐘の音が鳴り出した。
もうすぐ年が明ける。

目の前の列はまだゴールのお賽銭箱は見えず、あけましておめでとうの瞬間はこの列に並んだまま。

それがイヤって言うんじゃなくて……

掴んでていいって言われた主任のダウンの袖。
ちょっと恥ずかしいけど、かなり嬉しくて。
迷子防止だってわかってても、あと少しだけこのままこうしていたいなぁなんて。


「寒くないですか?」


突然話しかけられて隣の主任を見上げたら、その時列が動き出した。
条件反射で前に進んだら、石畳に躓いて転びそうになる私は両手で主任につかまってしまって。


「うわ、っと」


しかも色気のない声つきで。


またやっちゃった
何でこんな風に主任の前だと、ドジっこになっちゃうんだろ?


「ごめんなさいっ」


すぐに謝って体勢を立て直す私に主任はため息を付いてから


「……やっぱりこっちのほうがいいですね」


―――え?


さっきまで私は主任のダウンを握っていたはずで
少し近い距離にこのままでなんて思ってたけど

今私の手が握ってるのは、


えええええええ?!


……もしかしなくても主任の手?


手袋越しとはいえ、しっかりと繋がれた手。
そこから熱が上がってきたみたいにきっと顔まで赤くなってるはず。

到底主任の顔なんて見れそうになくて。
でも下を見れば確かに手は繋がれてて、


「え、っと、あ、の……」


なんて言っていいかわからずに若干パニック状態。


「危ないですから。最初からこうすればよかったですね」


って、なんでもないことのように言う主任。

それはきっと主任にとっては子供の手を引くような……ただそれだけのことのようで。


「でも……その、」

「この方が私も暖かいですし」


そう言って指で私の手袋の感触を確かめるともう一度握りなおした。


寒いどころかっ
熱いです。主任っ
いろんな意味で