彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)

一度離した主任の腕をおずおずと掴み、今度は余所見なんてしないでまっすぐと前を向いて歩く。

こんなに人がいては除夜の鐘を神聖な気持ちで聞くなんて事できそうにないだろうなぁ。


「……鐘の音を聞くというよりも人を見に来た感じになってしまいましたね」

「今、同じ事考えてました」

「除夜の鐘は、家で聞くほうがよさそうですね」

「ほんとですねー。こたつにはいってテレビ見て、年越しそば食べながら」


そう、毎年私はそんな感じ。
だって外寒いのにわざわざ出るなんて考えもしない。


「ハハッ その姿、想像できますね」


なんか笑われちゃった。

最近主任、よく笑うようになったと思う。
ちょっとだけ口角を上げて微笑んだとかじゃなくて、今みたいに声を立てて笑うことさえある。
まぁほとんどが私の失敗したときやおバカなことやった時なんだけど。

そういえば主任はどうなんだろう?


「主任はいつもはどんなお正月なんですか?」

「そうですね……寝正月でしょうか」


え?
なにそれ不健康。
て、家族と過ごしたり、しないのかな?


「考えてみれば、外、出ませんね」

「私は近所の神社にお参りとか行きますよ?おみくじだって引くし、今年なんて末小吉でいいんだか悪いんだかよくわからなくてとりあえず結んできちゃいましたけど」


元旦の日に引いたおみくじを思い出したら、何故か興奮してベラベラとしゃべっちゃったけどこんな話、主任どうでも……


「今年はいいのが引けるといいですね?」


主任にそう言われるといいのが引けそうな気がする。


「っもう絶対大吉とか引きますっ」


大吉なんて生まれてから覚えてる限りで二回しか引いたことないけど。

でも今年引けるんじゃないの?なんてこの時の私はほんとに思った。