彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)

緊張して車に乗り込もうとする私に主任は、


「車の中は暖かくしているのでコートは後ろに」

「え?あ、はい」


慌てて脱いで簡単にたたむと後部座席をあけてそこで置いた。
主任も着ていたダウンをそこに置くと運転席に乗り込んだ。

いつもと違って夜遅い時間のこの空間にありえないぐらい心臓がドキドキしている私に


「今日の予定は……


仕事の巡回ルートのように予定がスルスルと主任の口から発せられた。
ドキドキしていたのに、急に仕事みたいに聞こえてしゃきっとしてしまった私。

その様子を見た主任が、


「あ、すみません。仕事ではないのに……」

「いえ、今後の予定がよくわかりました」


うん。まずは神社で除夜の鐘?を聞いてお参りしてから目的地に向かうんだよね。

~♪~

そこに私のではない携帯の着信音。


「主任?携帯、なってますけど?」


どうやらメールだったようで、それを読んでいる主任。
携帯の明かりで主任の表情がよく見える。
また、眉間にシワがよったから朔也さん、なのかな?


「……朔也からです」


そう言って見せてくれた画面。


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桃華ちゃん、今日はごめんね

本当は直接謝りたかったんだけど

桃華ちゃんのメアド知らないから

今度空メールしておいてね

今日は楽しんできてね♪

          朔也
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主任の携帯なのに、主任のことは一言もなく。
明らかに私宛のメール。
朔也さんのメアドの書かれた紙は家に置いたまま。私から直接メールすることはないだろうから登録さえしていない。


「朔也のアドレス知ってるんですか?天ヶ瀬さん」

「え?あの?」

「……油断も隙もありませんね」


またあきれたようなため息。
そしてそのままメールの返信をしている主任に、


「私から朔也さんに連絡するようなこと、ありませんからっ」

「…そう、ですか」


さっきまでとは違う意味でドキドキしてる。
主任、一気に機嫌が悪くなったみたいで。


主任が返信を終えて携帯をまたポケットにしまうと、一気に車内に暗闇が訪れた。