彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)

主任が何か言ってるようだけど、遠くて聞こえない。

息を切らせて近づいた私は、挨拶しようとしたら


「走らなくても先に行きませんよ?」


休日モードのメガネをかけていない主任。
スーツ姿じゃなくてカジュアルな少し若く見える主任にちょっとドキドキして。


「え?あ、はい。いや、お待たせしてしまったかと」

「いいえ、待ち合わせの時間まではまだ少しあります」


慌てて時計を見て確認したけど、待ち合わせ時間の五分前。
でも五分前なのに、なんで主任外に出てたりしたんだろ?


「…あれ?ほんとだ」

「走って転んだりしたら危ないじゃないですか」


主任はまた、子ども扱い。
そんな何もないところで躓いたりしないし。


「大丈夫ですっ」


私はムキになって言ったけど、主任はフッって笑っただけ。


あれ?そういえば、主任だけ?
朔也さんの車だけど、姿は見えず車の中にもいる様子はない。


「あの、朔也さんは?」

「……来ません」


は?
来ませんってことは、
え?
まさか?
主任と二人きり???


「朔也はどうしても抜けられない用事が、出来たらしいです」

「そうなんですね……残念です」


用事が出来たことは仕方がないにしても。
二人きりだということに私の心臓が慌てだした。


だって二人きり?だよ?


「急だったので連絡しないで来てしまいましたが、やはり連絡するべきでしたね……」


あ、やっぱり二人で初日の出なんて主任はイヤだったんだ。
朔也さんがいうから仕方なく一緒に行くって言っただけで。
迷惑なんだ……


「いえ、あの、でも」

「天ヶ瀬さんが良ければ、行きませんか?」

「……いいんです、か?」

「もちろんです。そのために来たんですから」


そのために来た。って言ってくれたし。
本当は迷惑かもしれないけど。

そんなこと気づかない振りして、今日だけ。

今日だけ、主任と一緒にいさせてもらってもいい、かな?