クリスマスディナーを堪能してあとは食後のコーヒーだけ。

何を食べてもいつもおいしいけれど、今日はもうそれ以上で大満足の私はちょっとほろ酔い気味。


「桃華ちゃん、来てくれたんだ」


ぽわーってなってたから、なんか誰かに声かけられたなぁって思ってたら。

隣に人の気配。誰だろ?って顔を上げたらそこにいたのは朔也さん。

いつもの満面の笑みを浮かべて立っていた。


「朔也さんっ。あ、あの、おいしかったですっ」

「そう、それは良かった。連絡もないし来てくれないかと思ったんだよね」

「あの、スミマセン。でも、あの……」


少し伏せ目がちに寂しそうに朔也さんが言うからなんか申し訳なくなって謝ってみたけど。

私もここに着くまで、今日これるなんてこと思っても見なかったんだから言えるはずがない。


すると今まで黙っていた潤兄が口を開いた。


「桃、こちらは?」

「あ、潤にぃ。このお店のオーナーの神代さん」


私は慌てて朔也さんを紹介した。

なんだか潤兄、気のせいか朔也さんのこと睨んでない?


「どうも、相良です。桃が何かとお世話になってるようで」

「潤にぃ、何かとって何よ」


きちんとした挨拶と言うよりも、なんだかとげのある言い方で。
含みがあるって言うかちょっと攻撃的っていうか。


「お兄さん、じゃないよね?桃華ちゃんひとりっこじゃなかった?」

「あぁすみません、イトコなんです」

「イトコ、ねぇ……」


納得してくれたみたい?でなんとなく安心した。

小さい頃から潤兄って呼んでるから、それ以外の呼び方っていまさら出来ない。

でも、兄でもないのにお兄ちゃんって呼び方なんだか子供っぽいかな。


「まぁ今度はアイツとゆっくり来てよ」

「はい!今度また是非」

「それじゃあ、私はこれで」


朔也さんは優雅に振り返って厨房に戻っていった。

朔也さんのいうアイツって主任のことだよね?
でも朔也さん、何であんな言いかたしたんだろ?
らしくないって言うか……


「桃、今の。何で知り合いなわけ?」

「あーえっと、会社の上司のお友達なんだけど」

「へー」

「外回りのランチとかたまにここに寄ってるから私の事も覚えてくれたって言うか……」

「ふぅーん」


聞いておいて、それ?
興味ないなら聞かなきゃいいのに。