連絡が来るのがわかっていたから手近に置いていた携帯から聞こえてきた声。


『桃、今どこ?』

「家、だけど―――」
『住所メールしておいて』

「だから―――」
『三十分ぐらいで着くから』


私の言葉を最後まで聞かずに電話を切る潤兄。
ありえない。
人の話は最後まで聞きましょうって学校で習ったでしょう?


私は切られてしまった携帯電話を見つめ、ため息とつきながらもすぐに住所を打ち始めた。

この前会った時に、どのへんに住んでるって話はしてたからそれで目指してくるんだろうけど。

大体、名乗りもしないで話し始めるとか、携帯に登録してれば名前は出るけど礼儀ってものでしょう?

それに、人の話し聞かないとかお母さんや伯母さんと一緒。
さすが親子といった感じだけどそんなところが似なくてもいいのに。


私はぶつぶつ文句を言いながらもメールを終えると画面を見た。


はい?
私が返事しないのをいいことにキューブさんの妄想が炸裂してますけど?



フトモモ天使: ちょ、キューブさん!

CUBE: あ、やっと反応した

フトモモ天使: ちょっと電話がきて話してたんです

CUBE: あーこれからデートのお迎えくるんだ?

フトモモ天使: だから違うんですって><;



お迎えには来るけど、イトコだしそもそもデートじゃないし。
妄想炸裂してるから何を言っても無駄そうなので、



フトモモ天使: じゃあそろそろ落ちますね^^

雪姫: 楽しんできてねー^^

CUBE: 素敵なクリスマスを!

スーラ: またねー^^



はぁ、なんかどっと疲れた。

荷物は特にないとはいえ、化粧品と携帯の充電器これだけは必要。

私はバックにつめながら、どこでご飯ご馳走してもらおうかと考えてからふと気がついて


ご飯食べるならこのままじゃちょっとかなぁ?
特に約束もなかったし普段の通勤服。

慌ててクロゼットを開いて服を選びなおした。
デートじゃないけど、気分だけでも、ね。