「……さん、あま…せ…ん」
誰かが呼ぶ声が聞こえたような気がして目を覚ました。
見慣れない部屋。
見慣れないタオルケット。
ん?
ここ、どこ?
「起きましたか、天ヶ瀬さん」
ん?夢の中?
後ろから聞こえてきた声は、主任?
え?主任?!!!
あわてて飛び起きると、回らない頭でここがどこか考えた。
……そうだ、主任の看病してて。
うわぁ、私ったらそのままリビングで寝ちゃったんだ。
しかもソファーを枕にしてうたた寝とかっ
後ろから聞こえてきた声は確かに主任で、コップを手にしてこちらに歩いてきている。
「主任っ寝てなきゃダメじゃないですかっ」
「だいぶ楽になりましたから。天ヶ瀬さんこそ、そんなところで寝たら風邪ひきますよ?」
「でもっすごい熱だったから……」
「ほら、もうこの通り」
さわりますか?とばかりに額を近くに持ってくる主任。
ち、近いってば!!!!!
慌ててぶんぶんと首を振ってそれを拒否する。
それを見た主任の顔がくしゃってなってハハハと笑い出した。
「冗談です。そんなにムキになって拒否しなくても」
「あのっ、本当に大丈夫、なんですか?熱」
床に座ったまま見上げるようにして主任に問うと、
「だいぶ汗をかいたのでシャワー浴びようかと思ってリビングに来たら、ネコみたいに丸まって天ヶ瀬さんが寝ていたので」
「や、あの、寝るつもりは、ほんとになくてって、え?今、何時ですか?」
「2時ですね」
「え?あのすみませんっ、すぐにお暇しますの―――」
「ダメです」
へ?
なに?
今ダメって?
どういうこと?
「送ってもいけませんし、こんな時間に帰るのは危ないじゃないですか」
「え?でも、車、ですし、近所ですよ?」
「朝になってからにしてください」
え?朝って、このままこの家に泊まれって事?

