「……あ、の。コーヒーが、冷めま、す……けど」
激しくなる心臓の音が聞こえちゃうんじゃないかとか
きっと重いだろうとか
考えたらもう、いても経ってもいられなくて。
コーヒーが冷めるとか
夏なんだから冷めてもいいのに。
結局そんな言葉しか思い浮かばなくて。
その瞬間深いため息を付き、そっとホールドしていた手を離した主任。
あ、離しちゃうんだ。
自分が離せって言っておきながら、それを少し寂しく思うなんて。
足先がついていなくてそのままソファから起き上がれずにいる私の背中をそっと押し手伝ってくれた主任。
立ち上がる瞬間に少し触れた左手が少し熱くて、初めて触れた主任の手。
その手の温かさに……
温かさ?
ん?熱かったよ?今、かなり!
バって振り返って主任の手をつかむとやはり熱くて、慌ててそのまま主任の額に手をのせる。
ちょっと、なにこれ。
薬どころかお医者さんいかないといけないんじゃないの?ってぐらい熱い。
「主任っすごい熱じゃないですか?!」
「……たいしたこと―――」
「さっさと寝てくださいっ寝室どこですか?」
たいしたことないわけない。
こんなに熱あるんだもん。うっかり手を引っ張っちゃう事だってあるよ。
もう、なんで?どうして?家についてすぐに主任を寝かさなかったんだろう。
そのまま主任の両手首を持って立ち上がらせると「早く寝てください!」そう言って主任を引っ張って寝室に連れて行った。
寝室に入るとセミダブルのベッドが一つ。
他は何もない。
ベッドまで連れてきて私は手を離すと「ちゃんと着替えて早く寝てください!」と強い調子で言った。
そんな私の様子に驚く主任に着替えを促して外に出た。
あんなに熱あったら、額に張るシートぐらいじゃ全然ダメで。
私は急いでキッチンに戻ると氷枕に使えそうなものを探す。
けど、そんなものはなくて、大き目のボウルに氷を入れて冷水を作ると浴室から持ってきたタオルを浸してきつく絞る。
それを持ってもう一度寝室へ行き、ノックをしてから入る。
さすがに着替え途中だったらいけないでしょう?
返事がなかったのでそぉーっとドアを開けるとキチンとベッドにはいっている主任にホッとする。

