彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)

不意に手首をつかまれて、前に進むはずが後ろに引き戻されて。



ポスン



こともあろうか主任の膝の上に横向きに座ってしまった私。




ぇ?
えええええええええええええええ?


ちょ、なに?
私、今、どこに座ってる?



何が起こったのか理解できずにいる私をそのまま抱きとめるように主任の両腕ががっちりとホールド。



満員電車の中で急ブレーキかけられて前に座ってる人の上にウッカリ座っちゃうのとは違うんだから。
イヤ、それもすごく恥ずかしかったけども。
だから、そうじゃなくてっ。



なんで?主任のひざの上に?
てか病人でしょ?主任。


熱出過ぎておかしくなった?
だから腕引っ張った?

コーヒー運んで寝てるからそっと置いて、
それから……


頭の中で整理してみるけど、サッパリ状況がうまくの飲み込めなくて



パクパクしている私に主任が、ゆっくりと私の肩に顎を乗せて耳元で切なく呟く。



「……少しだけ、こうさせてください」




ドキン―――。



ずるい。
そんな切なそうに呟かれたら、何も反論できなくなる、のに。


重いんじゃないか、とか
なんで今この状況になってるの、とか


そんなことよりも今主任にこうされていることに
ただただ切なく、主任への想いをイヤでも感じてしまう。


きっと主任は具合が悪いから気が弱くなっていてちょっと人恋しくなってるだけ。
人って具合悪いと心寂しくなるから、ただそれだけのこと、なのに。

だけど、少しだけ。
今だけ。
ちょっとだけ、主任の温もりを感じていたい。