で、今主任を乗せて帰る途中。

社用車だと主任が運転してくれるけど、今日は自分の車だからもちろん運転は私。
主任はシートにもたれて前を見ているけど、見られてるような気がしてすごく緊張。
だけどこの空間に二人でいるって事がちょっとだけ嬉しい。


「どこかよりますか?ドラックストアとか」

「薬は、いいで―――」
「飲まなきゃ治らないですよ?」


ちょっと強引だったかなって思うけど、大人しく寝ないだろう主任。
自宅にいても薬も飲まずに仕事をしていたら余計悪くなるような気がする。

そんな私の思いが通じたのか「……では寄ってください」と言ってくれた。


「天ヶ瀬さんって、思ったよりも、」


主任がそう言った所でドラックストアについてしまった。
思ったよりも、なんだったんだろう?


「買ってきますので、天ヶ瀬さんはここにいてください」


パタンと音がしてドラックストアに向かう主任。
フラフラはしてないけれど、いつものキリッとパリッとした後姿じゃなくてやっぱり心配。

なんでも一人で出来そうな主任だけど、何かしてあげたいと思う。
私に出来ることなんてなさそうだけど。

そういえば主任って一人暮らしなんだったっけ?
ご飯とかどうするんだろ?

主任、きっと薬しか買ってこないだろうし。
そう思ったら私は慌ててドラックストアに向かった。

お店に入れば主任はちょうど会計をしているところで、レジに置かれているのは小さな袋だけ。


「主任、ご飯とか飲み物とか買わないとっ」


私が声をかけると驚いたように目を瞬かせていているから、カゴを持ってずんずんと中に入っていった。
どうせ言っても「いりません」って言われるに決まってるし、私が買って渡しちゃえばいいんだ。
うん、そうしよう。

勝手に自分の中でそう決めるとおかゆのレトルト数種とペットボトルの飲み物を二本。
あとおでこに貼るシートをカゴにいれてレジに向かう。

そこにはまだ主任がいて私の持つカゴを見ると眉間にシワを寄せている。
何か言われる前にさっさとレジに並ぶと会計を済ませて主任のもとへ。


「はい、では帰りましょうか?」


ニッコリ笑ってからそう言ってお店を出た。
主任だって酔った私を家のドアの前まで送ってくれたんだから私だってこのぐらいしてもいいでしょう?って。

ちょっと強引って思うけど、このぐらいしないと主任は拒否しそうだから。
具合の悪い時ぐらい言うこと聞いてもらってもいいよね?