そこまで話して会話が途切れる。

気のきいた会話、気のきいた会話、
そんなの普段気にしてないから私の中にストックなんてなくて。


―――無言。


主任は運転してるんだから無言でいいんだけど。
社用車の中だったら仕事中だし、無言もありなんだろうけど。

今日は休みの日だし
プライベートだし

なんか思いつかないの?会話。
って思ってたら、横から「ご飯にはやっぱり少し早いですね」と助け船。


とはいえ。自分で迎えに来ておいて、今それ言いますか?主任。
しかもそれ、回答に困るんですけど。


「そう、ですね」

「ドライブでもしますか?」


へ?
今ドライブって言った?

家に迎えに来てもらって
ドライブして
ご飯を食べる

それってデートの王道じゃないんでしょうか?

いやいやいやいや
これって朔也さんに言われたから仕方なくのご飯だし。
車届けるのに仕方なくだし。

勘違いしそうになる思考を押しのける。


「そう、ですね」


ばかばか、私。
それしか言えないの?


「ドライブには音楽をかけるんでしょうけど、朔也のなのでラジオで我慢してください」


あ、なんかラジオがあれば話しなくても間がもつんだ。
しかもDJが言ったことから会話したりできるし、ラジオってすごい。


「主任って、社用車でラジオつけないですよね?」

「そうでしたか?」

「はい。この前同行したときは、つけてなかったと思います」

「…特に意味はないです」


って言った主任の眉間にちょっとシワがよったのを私は見逃さなかった。
なんか聞いちゃいけなかったみたい?


それからまた無言で、ラジオから聞こえてくる声と音楽が車の中に流れているだけ。

やっぱり気のきいた会話、私にできないみたい。