話は最後まで聞いてください主任。

ていうか、主任の予定はどうなのか聞いてないんですけど。答えはなしですか?

目の前でメールを打つ主任をボーッと見てはいるけど。
なんていうか、この展開についていけてません。


「おまたせいたしましたぁ」


さっきオーダーしたばかりなのに、もう来たよ。さすがファミレス。
お料理出来上がるのだけは早い。


その声が聞こえると同時に携帯をスーツの上着のポケットにしまうと「それじゃ、いただきますか」といって食べ始めた。

ファミレスとはいえ、そこそこおいしいはず、なんだけど。
明日って結局どうなったのって思いながら食べたから味なんてわからなかった。


主任が食べ終わって食後のコーヒーを飲みながら「朔也に伝えておきましたから」とか言うんだけど。

だからそれ、ご飯食べる前に言ってください。
おかげで味よくわかんなかったじゃないですか。


「あ、あのっ」

「明日迎えに行きますから」


って、迎え?
どこに?まさか家?

家の場所は知ってるだろうけど、
っていうか何それ。

週末に家に迎えに来てもらってレストランでご飯。
それだけ聞いたらデートみたいに聞こえますよ?


「6時ぐらいで大丈夫ですか?」

「へ?」

「天ヶ瀬さんの家に行く時間ですが」

「あ、はい」


よくわからないまま返事をして。
食事を終えた私たちはお店を出て駅に向かった。



そして今は電車の中。
今日の報告書のメモを書く振りをして、頭の中では妄想タイム。


とりあえず落ち着こう。
明日朔也さんのレストランに主任と一緒に行くらしい。
それで、家まで迎えにきてくれるらしい?

いや、待って。
明日主任と一緒にご飯を食べに行くのはもう決定事項。

だったら
明日って土曜日だから通勤用の服ってわけにはいかない。
ワンピースだと何気合い入れてんのって引かれそうだし、でもせっかくだからおしゃれしたい気もするし。


っていうか主任と休みの日にお出かけとか。まるでデート……


ヤバイ
緊張してきた

今日眠れないかも。


そんな私の頭の中のことなどまるで知らない主任は静かに隣で本を読んでいる。

電車の席の隣ってともかく近くて。
また変にドキドキして、時折触れてしまう肩を妙に意識したりして。


ハァー


大丈夫かな。私。