「桃ちゃん、どうした?」
望亜奈さんの声が聞こえて、慌ててもう一度受信フォルダを確認する。
「えと、主任……」
「え?主任から?」
「あの、メールがきてたみたいです……」
時間を確認すれば、私が家についてしばらく経った頃。
たぶん、望亜奈さんがくることになってバタバタしてたからそのときにきてたのかも。
画面を見て固まる私に聞こえてきたのは、
「無事に家につきましたか?」
私のメールを覗き込みながら声を上げて読み上げる望亜奈さんの声。
「ちょ、望亜奈さんっ」
「それ、返さなくていいの?」
返さなくていいのってことはメールのことだよね?
でももう1時過ぎなんだけど、会社の上司にメールしていい時間はとっくに過ぎてる。
会社の上司じゃなくたって、一般的にこんな時間にメールとはいえ失礼にあたる。
「でも、もうこんな時間ですよ?」
「でも心配しちゃうよ?主任」
「でも……」
でもばっかりで全く会話が進まない。
だけど、さすがにこの時間にメールは返せない。
「仕事用の携帯だし、この時間は電源オフにしてるかもしれないから大丈夫じゃないの?」
そう言われたけど、やっぱりこんな時間にっていうのが先に頭に浮かんでしまって。
返信するのはためらわれる。
「ん。でも明日起きてからメールします」
「そっか、わかった。じゃあ、ま。飲もっか」
え?
まだ飲むんですか?望亜奈さん。
どうやらこの日、望亜奈さんのお気に入りの人と会えたのはいいけど、その人が会いたかったのは望亜奈さんのお友達だったようで、飲みながら愚痴りだした。それで望亜奈さん、ちょっと変だったんだ。
結局この日、ソファーでそのまま寝てしまった望亜奈さん。
そっと布団をかけて、私は自分のベッドにもぐりこんだ。
朝起きてメールできるように、念のため目覚ましをかけて。

