嵐のようなあの雨の音
雷の音
見てる人たちの笑い声
バットで殴られた時の鋭い痛み
雷の音にかき消される助けを求める自分の声
全てを鮮明に覚えてる。
バットで私を殴る女子の顔は……
笑っていた。
……とても、恐ろしかった。
しばらく殴られ続けて、やっとバットを振る手を止めてくれたけど
本当に、死ぬんじゃないかって思った。
それで、私はそのまま気を失って、気がついた時には体育館倉庫とは別の場所にいた。
校舎裏に運ばれていたみたいで、大雨の中私はボロボロのまま捨てられてた。
携帯で時間を確認すると夕方の5時半くらいで、
最終下校時間だ、帰らなきゃ
って思って、
私はさっきまでの出来事を思い出すことなく帰った。
正確には、“思い出したくなかった”だけど。
足を引きずりながら家に帰ったら、
お母さんはそりゃもうびっくりして
すぐに病院に連れてってくれたよ。
病院の先生に、「何があったの?」って聞かれたけど
私は黙って何も答えなかった。
とりあえず手当してもらって、腕にヒビが入ってたけど
一応他は強い打撲とかですんでた。
というか、よく折れなかったなって思うよ。
家に帰ってからも、お母さんに事情を聞かれたけど
私は一言も話さないままで
お母さんも、私が話したくなるまで待ってくれてたから
無理には聞こうとはしなかった。
あの出来事から、私は学校に行くことはなくなったの。
外に出ることも。
お母さんに一言も話すことはないまま、数日が経った。
するとある日、突然あの時のような強い雨が降ったの。
窓も割れるんじゃないかってくらい、大きな音の雷も鳴り出して
無理矢理に消し去ろうとしていたあの時の恐ろしい記憶が、一瞬にしてフラッシュバックした。

