私は少しゆっくりドアの影から出て、リビングに姿を見せた。
「どうしたのそんなところに突っ立って!ほら早くこっち来なさい、紅茶用意するわよ♪」
お母さんが明るく振る舞って、キッチンに移動する。
さっきまでのリビングに漂っていた重い感じの雰囲気は、お母さんのその一言で吹っ飛んだようだった。
私は、少し距離をとった先に、お母さんの再婚相手とその息子がいることはわかっていたけど、目を合わすことはしなかった。
いや、できなかった。
怒ってなんかない。
威嚇してもない。
だからと言って、信用したわけでも受け入れたわけでもない。
感情はとても複雑で、自分にさえ理解できないでいた。

