「……ありがとう空くん。」
「あ、いやこちらこそっ」
リビングから聞こえてくるお母さんと息子の声に、距離の縮まりを感じる。
そうやって、お母さんにうまくつけこもうとしてんの?
いい人ぶってんでしょ。
絶対そう。
「ありがとう由香里。大丈夫だよ。焦らず時間をかけていけば、きっと分かり合える時はくるよ」
今度は違う男の声が聞こえた。
再婚相手の方か。
こいつも、またそうやってうまいこと言っちゃって。
「分かり合える時は来る」?
そんなの、どこからの自信なわけ。
私のことなんて何も知らないくせに。
大人の余裕ってやつ?
なにそれ。
ばかばかしい。

