「ちゃんと言っておかないとダメかなって思ってね。娘の不登校の理由はね……」
だ、だめ……!
お母さんが言いかけた瞬間、私はすぐに止めに入ろうとした。
片足をドアの影から出しかけた、その時だった。
「あ、ま、待って!!」
突然、男の声がリビングの外まで響いてきた。
その大きな声にビクッと肩が跳ねる。
と、同時に、出しかけた足を素早く元の位置に戻し、私はまた盗み聞き状態の体勢になる。
私は壁に背中をつけて、息を潜めていた。
な、なに?
急に大きな声出して……
「す、すみません……。あのでも、ちょ、ちょっと待ってほしくて。」
これは……息子の方の声?
何言い出すんだ?
どーせ、意味のわからないことほざき始め……
「……俺、その続きは、その……ほ、本人から聞かなきゃいけない気がして……。」
息子はそう言って、お母さんの話を遮った。
な、何を言い出すのこいつ。
本人って、私?
なんでまたそんな発想に……
息子は話を続ける。

