そしてお母さんは、話を続けた。
「……でも、その人たちはその人たち。
関係のない人たちみんなを、陽菜のことを傷つけた人たちに当てはめちゃいけないわ。
そうすることによって、陽菜自信が悪い方向にとらわれちゃうもの。
それに、陽菜のことを本気でわかろうとしてくれている人を突き放してしまうのは
とても失礼なことよ。
危機感を持つことも、疑うことも悪いことじゃない。
でも、目の前にいる“その人”を、ちゃんと見ていないのに
はじめから全く信用しないっていうのは、
逆にその人を傷つけちゃうんじゃないかな。
本気で向き合ってくれようとしている人を、自分の言い分で押しつぶしちゃいけないと思うの。
陽菜も、わかってるんでしょ?
空くんは、きっと悪い人じゃないって。
だから、迷ってるんじゃないの?」
「……わかんない」
「陽菜には、まだちゃんと人を信じる気持ちが残ってるのよ。
信じたくないのは傷つくのが怖いから。
でも、怖くないなら、裏切られないなら、本当は信じたいって思ってるはずよ。
空くんのこと、信じたいって思ってるんでしょう?」
「……でも、何を基準にして信じればいいのかわかんないし。「信じていいかも」って思える根拠がないと、むやみに信用なんてできない」
「そんなの、一緒にいればわかることよ。」
「一緒にいるだけでなんて……」
「だって、本性は隠しきれないんでしょう?」
お母さんは、空と空のお父さんがこの家に来た時に私が言い放った言葉を覚えていたみたいだった。
『本性は隠しきれないんだから!』
確かに私はそう言った。
「…………」
「ふふっ、大丈夫よ、空くんは。」
「……どうして、そんな確信的なこと言えるの」
「ん〜、女の勘よ♪」

