「ん〜いや、最近どうかなーって。空くんと、ちょっとは打ち解けてるみたいだから」




お母さんは、自分のホットミルクを眺めながら私に言った。




「……あぁ、うん。なんか、よくわかんないっていうか」




私がそう言うと、お母さんが「ん?」とこちらを向く。




「……なんか、あんなに、あの二人のこと絶対に追い出してやるって思ってたのに……だんだん思わなくなってきて」


「あら、いいじゃないっ」


「……でも、あの人……」


「空くん?」


「そう。あの人、今までに会った人とはなんか違う感じがして、調子が狂うっていうか……。絶対心開かないって思ってたのに、なんだか自分の気持ちが緩んでいってるっていうか……」


「嫌なの?」


「……わかんない。


でも、人なんてみんな、最後は裏切るから。


そうわかってるのに、


この人は大丈夫かもしれないとか、


今までとは正反対のこと思いはじめてる自分がいて……怖い。


また、傷つくかもしれない。


だから、簡単に信じちゃいけないのに。」




私はうつむきながら、少し震えた声で言う。




すると、お母さんはまたひと口、ホットミルクを飲んだ。







「……陽菜。


この世の中ね、いろんな人がいるの。


みんながみんな、陽菜の敵じゃないのよ。


陽菜が今まで出会った人たちは、陽菜にとって悪い人だったかもしれない。


仲良くしてくれたと思ったら、手のひらを返して、


陽菜を傷つけた。


……私も、陽菜を傷つけた人たちは許せない。


どんなに謝られても


土下座されても


お金を積まれても


そんなの全て受け入れない。


一生許さない。


絶対にね。」




お母さんの声が少しずつ低くなっていくのがわかる。




怒りがこみ上げてきているのが、わかる。