あれから2週間が経った。




陽菜はあの嵐の日の夜から、夜ご飯を食べる時にリビングに顔を出すようになった。




やっと、陽菜がちゃんと俺たちと向き合ってくれたのだ。




由香里さんも父さんもすげぇびっくりしてたけど




2人とも嬉しそうに笑いかけると




陽菜は少し、照れくさそうにしていた。




本人は強気に威張っているつもりなのだろうけど、




俺らから見たら素直じゃないだけで、本当は少し、嬉しそうなのがわかったんだ。




初めて4人で食卓でごはんを食べた時は、いつもより何倍、何十倍もうまく感じた。




陽菜がリビングに来ないことは気にかかって仕方がなかったから、俺はものすごく嬉しかった。




目の前に陽菜がいることに、安心したんだ。




それから、陽菜はだんだんとリビングにいる時間が増えていき、




ソファに座ってじっとテレビを見ている時もあれば




漫画を読んでいる時もあるし




スマホをいじっていると思ったら




お菓子を食べていたりする。




陽菜と俺は、日に日に言葉を交わす数も増えていき




普通に話ができるようになった。




まだ、陽菜は俺の父さんには少し敵意をむき出す時もあるが




父さんが話しかけると無視することはなく、ちゃんと答えるようになっていた。




時間が経つごとに陽菜との距離は徐々に縮まっていくように思う。




やっぱり、“時間”というものは大事だ。




すぐに何かできるわけじゃない。




すぐに何かが変わるわけじゃない。




けど、少しずつ、少しずつ変えていける。




だから、焦らず時間の流れに任せるというのも




ありなんだと感じた。




俺は普通に焦った行動をしてしまったが。




……でも。




陽菜が部屋から出てきてくれるようになってよかった。




本当に、よかった。