「俺は、陽菜のこと今はまだ何もわからないけど、これからちゃんとわかっていきたいって思ってる。陽菜のこともっと知りたいから。だから、たくさんぶつけてくれ。どんな感情でも、俺は受け止めるから。」
男は、目にまだ涙を残しながらも真っ直ぐ私に伝える。
どうしてそこまで迷いなく言えるのか。
不思議だ。
それでも私は、その男の言葉に
ちょっとの安心感を覚えていた。
「……私のこと知っていくうちに、嫌になると思うよ」
「俺のしつこさに、陽菜が嫌になるかも」
仏頂面な私に対して、ニッと歯を出して笑う男。
いつの間にか過去のトラウマが、ほんの少しだけ、和らいでいく気がした。
……空。
心の中では
この人の名前を呼んでみても……いいかな。