だけれど、凛月には気になる事があった。
粋香は、凛月を見ても、無関心で、それどころか、不思議そうな表情で、凛月を見ている。


‐「気づかれたかと思いますが、粋香さんは、事故の記憶及び自分が誰かもわからない状態です」

「あの…それってずっとそのままなんですか?」

「自分が誰で、あなたたちが誰かを思い出す可能性はありますが、過去に起こった出来事については、おそらく思い出す事は難しいでしょう」

風助のあまりにきっぱりとした口調に、凛月は項垂れる。

「そもそも、記憶を失った原因って、思春期によくある恋愛のゴタゴタで、ライバルに突き飛ばされ、頭を強く打ったからでしょ。
そんなつらい事、思い出す必要ないでしょう」

冷たく言い放す風助に、ムッとした表情を浮かべる凛月。