「キミね、学校で強く頭を打って、救急車で運ばれたんだよ」

「学校で!?」

思い出そうとすればする程、頭痛はひどくなる。
まるで、思い出すなと言うように…。

「無理して思い出す事ないさ」

風助はそう言って、粋香の肩に手を置いた。
その手はとても優しくて、懐かしくて、なんだか涙が出そうになった。


‐がらりと、病室の扉が開き、凛月(りつき)、夏菜子(かなこ)が入って来た。

粋香の肩に置かれた、風助の手を見て、凛月は眉をひそめる。
夏菜子も状況が飲み込めず、オロオロしていると、

「りつ、かな!
今から先生の話を聞くから、こっち来て!」

救急車で先に来ていた純生は、凛月たちと一緒に、粋香の容態を聞こうと待っていた。

「ほら、先生も!
先生がいなきゃ、話にならないじゃないですか!」

先生と言われ、目の前の男が、医者だと知ると、凛月の気持ちも落ち着いた。