…拭っても、拭っても、人を押した感触は消えない。

友梨の母親は、きつい性格をしている。
友梨の妹・梨杏(りあ)が、同級生からの嫌がらせが原因で、小学校高学年は、強制参加の陸上の練習を、嘘をついて休んだ時も、休んだ事だけを見て、

『そんな頃から楽を覚えて、ダメじゃないの!
どうしたらそんな事が出来るわけ?
やっぱりあんたなんて産むんじゃなかった…』

小学6年生の妹に、容赦のない言葉を投げつけた。

そして、友梨が問題を起こした時は、

『あんたはこの家の恥!
本当、恥ずかしい…』

嫌悪感の満ちた顔で、友梨を一瞥した。

もし、今回の事がバレたら、何よりも世間体を気にする母親の事だ。
間違いなく、友梨を勘当するだろう…。