「それやったの、友梨だろ」

静かに、友梨の名前を言う。
言ったら、もっと酷い目に遭うのは明白だが、反対に黙ったままなのも悔しい。

「…俺が言っといてやるから、安心しな」

結局、黙っていたが、凛月にバレた。
凛月は、粋香の肩を優しく叩くと、自身の教室に向かって行った。
その、後ろ姿が、既に友梨に対して、怒っているのがわかり、途端に胸騒ぎがした…。


放課後、いつも通り、部室に向かうと、部室のドア付近に、友梨がいた。

「あんた、今朝の事、りつに言ったでしょ!?
あたし、すごく怒られたんだから」

その目には、うっすらと涙が浮かばれていて、凛月が好きな、友梨に対して、少し申し訳ない気持ちになったが、

「寺本(てらもと)、コイツ?」

知らない男たちが、ソフトボール部の部室から出てきて、粋香は思わず、後ずさる。