「いいよなぁハルは。僕なんか2週間練習してやっと弾けるようになったとこなのに。」



私の隣でそう言ったのは同い歳の木崎奏多。



2週間で弾くのもかなり難しいこの曲。



私が思うに、奏多は努力の天才だった。



心の底からピアノが好きで、レッスンのない日も教室に来て練習しているのを私はよく知っていた。



「たった2週間で弾けるなんて奏多もすごいよ。しぃはまだ弾けないし…」



天才2人に囲まれて凡人の私は少し寂しかった。



私が一生懸命練習してもなかなか弾けない曲を難なく弾いてしまう2人が羨ましかった。



「でも僕は詩月の音、好きだなぁ。」



ふと奏多が呟いた。



「え…?」



「詩月のピアノは聴いてるとなんだか落ち着くんだよね。」