「そうだ。湖の姫は驚きショックで寝込んでしまった」

なんて柔な女。愛しのダーリンなら、どんな姿でもどんと受け止めるべきだろう。

「その姿を見た龍は、湖の姫から身を引き、日照りとなっても枯れぬ滝になったという。そして、それを知った湖の姫は嘆き悲しんだ。それが愛恋の滝に伝わる話だ」

ということは……湖の姫もやっぱり龍を愛していた、ということか。気付くのが遅いんだよ!

「悲恋ですね……」

どことなく、海と私に似ている。

そんなことを思っていると太田のおじいちゃんが「だが、この話しには、後付けで続きがあってな」とまた話し始める。

「湖の姫の涙でできた湖に、愛恋の滝の水を引き込んだのは湖の姫で、実は全て二人の作戦だった、というオチがある」

「あぁぁぁ?」思わず目を剥き、「何それ?」と素っ頓狂な声を上げた。

「湖の姫の父親が二人の仲を反対して、湖の姫を無理矢理隣国の殿様と結婚させようとしていたらしい」

だから湖の姫は龍と永遠に生きるために、その身を湖に沈めるという計画を立てたらしい。

「実際、身を沈めたが、湖の中では龍の力で、竜宮の乙姫みたいに水中でも生きられる力を得ていたようだ」