アイとレンはコモンマーモセットという種類の猿で、温厚な性格なのだが、とても寒がりで、温度を年中一定に保ってやらないと生きられないそうだ。

言わばこの温室は、アイとレンのために作られた家というわけだ。何とも贅沢な家だ。

「岬ちゃん用にお茶の支度もちゃんとできているぞ」

目の前の丸いテーブルに、三段のティースタンドがあり、サンドイッチやスコーン、色取り取りのマカロンやケーキなどが美しく盛られていた。

「アフタヌーン・ティーだぁ、ご相伴に預かります」

香り豊かな紅茶を、太田のおじいちゃん手ずから淹れてもらい、至福のひと時を過ごす。

「で、今日はどうしたんだ?」

サンドイッチを食べ終えたところで太田のおじいちゃんが訊ねる。
「そうそう」と私は本来の要件を思い出す。

「湖陽さんに伺ったのですが」と愛恋の滝と湖の伝説について訊くと、ああ、と軽く頷き、微笑みを浮かべ話し始めた。

「どうして愛恋の滝が恋愛成就の滝になったか、ワシは今以て分からん」
「それはどういう意味ですか?」
「本来、この物語は悲恋だったんだよ」

それは衝撃の事実だった。