「しかし、その直後、両親が亡くなりました。ゴタゴタしている間に彼女は堅物で有名な法学部の男と付き合い始め……そして、彼が弁護士資格を取ったのを機に結婚してしまいました。奴に完敗です」

目を伏せる湖陽さんは少し悲しげで、まだ彼女のことが忘れられないのだな、と思えた。

「逃がした魚は大きかった、ということですね」
「自業自得です。それ以降は現状態、仕事一筋に生きてきたのですが……」
「周りが放っておいてくれない、というわけですね」

イケメンも何だかんだで大変なんだと、おこがましいが同情する。

「だからね、僕もまともなデートというものをしたことがなく……」

ああ、ここでそこに戻るんだ。

「ですが、お付き合いはたくさんされてきたんですよね」
「君の思っている付き合いと、僕がしてきた付き合いには大きな違いがある」

ん……? 湖陽さんを見ると、苦笑いを浮かべて「僕の付き合いはSEXのみ」と衝撃的な言葉が放たれた。

思わず身を引く私に湖陽さんが言う。

「軽蔑しますか?」