「――そんな僕を見兼ねて、いつも自己責任で自由にさせてくれていた父が、或る日言ったんです『心から愛する人ができた時、後悔するぞ』と……で、後悔しました」

――ということは、愛する人ができたということだな、と理解する。

「彼女は夕姫の友人で、年下なのに母親を早くに亡くしていたからか、しっかり者で……健気な子でした」

湖陽さんの瞳が湖のずっと遠くを見る。

「妹のような存在だったのが、いつしか一人の女性として見るようになり……」
「告白した……」

ええ、と頷きコーヒーカップを手にした。しかし、飲まずにカップを少し揺する。

「OKを貰えると思っていました。彼女も僕を好きでいてくれると感じていたから……でも、返事はNOでした。遊び人の僕とは付き合えないと……」

このイケメンを振るとは、かなりの強者だと思っていると、フーッと息を吐き、湖陽さんが自嘲めいた笑みを浮かべた。

「それで目が覚めたんです。生まれ変わろうと留学を決め、三年待っていて欲しい……と彼女に言うつもりだったのですが……」

なるほど、留学は彼女のためだったんだと夕姫さんの話を思い出す。