「――風景ねぇ」湖陽さんがクスッと笑う。

「ところで、ちょっと突っ込んで聞いてもいい?」

どうぞ、と言うと、「岬さんは海君が初恋の君で……えっと、死体とキスしたのがファーストキスなわけ」と、どストレートに赤面するようなことを訊いてくる。

死体とキス。事実だが、そんな風に言われると凄くグロっぽく聞こえる。

「――そうですよ。それが、何か?」

だから、ちょっと喧嘩ごしに答える。

「そうかぁ……何者にも代え難き強烈なキスだね。で、その後、その舜っていう男にもキスされた?」

真面目な顔で、何という質問をするのだ!

「そっそんなこと、させません!」
「されなかった、じゃなく、させなかったんだ」

あっ、これではされそうになった、と言っているのも同じじゃないか!

「湖陽さん、さっきから何ですか? 奥歯に物が挟まったみたいに……言いたいことがあるならちゃんと言って下さい」

フーンと鼻を鳴らして、「言ってもいいんだぁ」と意味深に言う。