思い返すとあの当時、私たち三人は周りからどう見られていたのだろう?
友達同士……親友とその彼女……それとも、三角関係?

当事者だった私は、その距離があまりにも近過ぎて、何も見えていなかった。
見えなかったから、大切なものを見落としたのだろう。

二人の瞳が何を見ていたのか、どう見ていたのか……気付きもしなかった。

だから最後に大切なものを失ってしまったのだ。
海という愛する人を……舜という大切な友達を……。


 *


ポンポンと背中を叩かれ、初めて湖陽さんの腕の中だと気付く。

涙はあの地に置いてきたはずなのに……そう思うほどに流れる涙に……私はまだ彼を忘れずにいるのだな、と改めて気付き、更に涙が溢れた。

湖陽さんは何も言わず、小さな子をあやすように、いつまでも私を抱き締め、時折、背中や頭を撫でてくれた。

どれぐらい経っただろう。スンと鼻を鳴らし、顔を上げと優しく笑う湖陽さんの顔が目の前にあった。

「岬さん、そういう顔も可愛いと思いますが……正直、パンダも真っ青です」

そう言えば、と思い出す。今日は『ホテルに行くのだから』『見合いをぶち壊しに行くのだから』と慣れないマスカラやアイシャドウを塗っていたことを……。