リサーチの末、練習コースに選んだのは信号と交通量が一番少なく一本道ということから、湖を一周する湖岸道路にした。

嬉しい誤算だったのは、このコースのロケーションが半端なく美しいかったということだ。

あまりの眺望の良さに、時間の許す限りドライブに出掛けた。

それが幸いしたのか、二ヶ月もすると、隣町の大通り沿いにある大きなショッピングセンターまで行けるようになっていた。

そんな中で見つけたのが、カフェ・レイクだった。

その日、私は久し振りに落ち込んでいた。なのに憎らしいほどいい天気だった。

このまま部屋に燻っていたら、負のスパイラルに飲み込まれ、這い上がれず、仕事に支障をきたす! そう思った。だから逃げ出すように部屋を飛び出し、車に飛び乗った。

しかし、ハンドルを握り、エンジンをかけ、ハタと冷静になり、あの場所から逃げて来たのに、この先、私はどこへ逃げるのだろうと思ってしまった。

当然、新たな逃げ場などない。

人間とは――ではなく、私は開き直ると深く考えるのが嫌になる。だから、そのままドライブに出掛けた。

そして、走るうちにどんどん気分が上向きになり、Uターンする頃には、道の駅で名物の小鮎の天ぷらを食べてから帰ろう、と思うほど復活した。

しかし、その日、私はそれを口にする事はできなかった。
なぜなら、あれほど晴れ渡っていた空がにわかに真っ黒となり、雨が降り出したからだ。

夏の日に良くある夕立だったが、その日の雨は熱帯地方で見られるスコールのように激しかった。