「ええ、ここから湖を眺めるのが私の癒しですから」

壁一面のガラス窓。それに向き合うように設置されたカウンター。席は七つ。モーニングとランチ時は争奪戦になるほどの人気席だ。

ここから見る風景は、どんな日でもどんな時でも最高に美しかった。それは、切り取って、額に入れ、飾りたいほどに……。


 *


この店を見つけたのは偶然だった。

十八歳の時に友人に誘われ、免許合宿に参加をして無事に免許を取得したものの、交通機関の発達した都会では、ただの身分証明書に過ぎなかったのだが――。

この地に来た時、ようやくそれは日の目を見た。

心から、免許を取っておいて良かった、更新しておいて良かったと、自分で自分を褒め称えたほどだ。

大袈裟ではない。ここでは自家用車が足だからだ。

ちなみに、車の保有台数は一家に一台ではなく、一家に成人人数分、と言って過言ではない。

だから私も急き立てられるように、赤い国産の軽自動車を購入した。
今では、この愛車失くして私の生活は成り立たない。

ただ、四年もの間ペーパードライバーだったため、慣らし運転が必要だった。

都会とは違いのんびりムードの交通事情だが、久々の運転は自分も恐怖だが、他者にも恐怖を与えると思ったからだ。