案の定、見事に大当たりだった。

「最高です!」

当日は初秋を絵に描いたような爽やかな天気となった。
作家ながらどう表現したらいいのか分からないほど美しい光景だった。

「空も湖も紺碧色ですね。夏とは違いますね」

窓にへばり付くように身を乗り出し、カウンターに頬杖を付く。

「それ、持参してきたの?」

“それ”とは座布団とクッションのことだ。

「当然です。万全の体制で今日に臨みました」
「本当に一日中、座っているつもりだったんだ」

若干、呆れた様子だ。

「独り占めですよ、当然でしょう?」

何を言っているのだ、というように呆れ眼で見返すと、湖陽さんは「そうだったね」と苦笑する。

「今日の予定なんだけど」
「はい? ずっとここで風景を眺めていられるんじゃないんですか?」

湖陽さんがバツの悪そうな作り笑いを浮かべる。

「ああ、うん、大まかそんな感じなんだけど……」
「けど、何でしょう?」

ええい! チャッチャと言っておしまい、とジト目で見ると――。

「ああ、もう、分かった、言います。言いますよ!」

なぜ投げやりなんだと思っていると、「一緒にホテルに行って欲しいんだ」と、とんでもないことを言い出した。