「岬さん、来週の水曜日、こちらに来て頂けませんか?」
「水曜は定休日ですよね?」
「はい、だからです。一緒にお祝いしましょう!」

何をと思ったが、私が訊ねる迄もなく、湖陽さんがニコニコしながら答える。

「岬さんがこの街に来て一年、一周年のお祝いです」
「――湖陽さん、誤解のないように先に言っておきますが……」

『はい?』というように、首を傾げる様が従順なワンコのようで、湖陽さんが妙に可愛く見えた。年上なのに……。

それがツボにハマりそうになり、慌ててコホンと咳払いをして、おもむろに口を開いた。

「私がこの街に越して来たのは七月。今は九月。一周年と言うならば、カフェ・レイクに通い始めて、が正しい表現です」

「へー、そうなんだ。また一つ岬さんの秘密を知りました」

秘密にした覚えはないが、湖陽さんが嬉しそうなのでそれに関してはスルーすることにした。

「私の他にも誰かいらっしゃるんですか」

いいえ、と湖陽さんが首を振る。

「ということは、もしかしたら……この眺めを独り占めですか!」

鼻息荒く訊ねると、クッと口角を上げながら湖陽さんが頷いた。