「でも、どうして突然バラしたんですか?」

湖陽さんもナルシストK様も夕姫さんと同じことを訊いた。

「なんとなく」と夕姫さんとナルシストK様には言ったが、湖陽さんには本当のことを言った。

「もう亡霊でいる必要がないから」

『湖陽さん、貴方が私を日の当たる場所に引き出してくれたんです』と。

「岬先生!」と夕姫さんがウルウルと期待を込めた目で私を見る。

「私、処女作から全部持っているんです。あの、それ全部にサイン頂けますか?」

コクンと頷き、「ただし、条件が」と言う。

「先生と呼ぶのは止めて、それに敬語も、今まで通り友達でいて」
「友達じゃないだろう」

間髪入れず湖陽さんが言う。そして、私の左手を持ち上げた。

「あぁぁぁ!」

本日二度目の絶叫。
どうやら、サイン本に意識がいっていて、指輪に気付いていなかったようだ。

「おめでとう! えぇぇぇ、じゃあ、ミサキ先生が私の義姉!」

キャーキャー言いながらピョンピョン飛び跳ね、大喜びだ。