「と言うことは、とにかくOKなんだね。じゃあ、今夜改めて素敵なレストランで、薔薇の花束と指輪と共にプロポーズするね」

ニコニコと笑う湖陽さんを呆れ眼で見る。

「まずは指輪だね。じゃぁ行こうか」

唖然とする私を尻目に、湖陽さんは立ち上がると魅惑的なウインクと共に手を差し出す。

「行くってどこへ?」
「ジュエリーショップ」

もしかして私、嵌められた?
王子のようなイケメン顔が、ほら手を取って、と催促する。

全く何という男だ。フルフルと頭を振り、完敗と心の中で呟く。でも……。

「レストランと指輪はいいけど、薔薇の花束は遠慮します」

最後の悪あがきのように言い、彼の手を握り立ち上がる。

「本当、岬は可愛いな。分かった。薔薇は次回に持ち越しということで」と私の手を取ると歩き出した。

持ち越しって、といろいろ疑問は尽きないが、意識が繋がれた手に向く。
変わらない温かな手。

『愛恋の滝から流れ出ずる水は、枯れることなく湖に注がれる』と聞いた。それは、湖の姫に対する龍の愛を比喩したものに違いない。

こうやって、湖陽さんが私に温もりを与えてくれるように……。