凪ぐ湖面のように

墓穴を掘る、とはこういうことを言うのかもしれない。カッと上気する頬を隠すように俯き思う。

でも、あの時は相談できる状況では無かったじゃない。
恨み言が口から溢れそうになる。それをグッと押し込め言う。

「とにかくですね、海の思いは私が幸せになることだと分かったので……あの時、我が身を葬り去った日の私とは、さよならです。ここに今いる私は、新生、海里岬です」

そうだ、私は生まれ変わったんだ。言葉を発しながら心が浮き立っていくのが分かる。

「本当にいいお天気ですねぇ、気持ちいいです」

んーっと大きく伸びをする。

「なるほどね」

湖陽さんが「呪いから目覚めた、というわけか」と言う。

呪い……その言葉にちょっとムッとするが、よく考えたら、自分で自分に呪いをかけていたのかもしれない。

「湖陽さんも解けたんですか呪い」
「僕を目覚めさせてくれたのは君だ」

そんな真顔で言われると……照れるじゃないか。

「じゃあ、何かお礼を頂かなくてはいけませんね」

「そうだね」と湖陽さんがニヤリと笑う。

「飛びっきりのお礼をしなくちゃね」

何だ、その悪い顔は……背中を悪寒が走る。